農地を相続する際には、高額な相続税が発生することがあるので、納税に不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そうした負担を軽減する方法として、一定の条件下で農業投資価格を超える部分に相当する相続税額について納税が猶予される「納税猶予制度」が設けられています。
ただし、この制度を利用するには厳格な要件があり、条件を満たさないと猶予が打ち切られる可能性もあります。
この記事では、農地相続時の納税猶予制度の仕組みや適用条件、打ち切りのリスクについてみていきましょう。
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農地の納税猶予とはどんな制度
農地を相続すると、多額の相続税が課される場合があります。
そこで、農家の負担を和らげるために創設されたのが「納税猶予制度」です。
要件を満たすことで相続税の納付を繰り延べでき、営農の継続に集中できる環境が整います。
本章では、制度の趣旨や背景について解説します。
農家の安定経営を支援するために設けられた制度
納税猶予制度は、農業の継続と経営の安定を図るために導入されました。
後継者が耕作を続ける限り相続税の納付を先送りできるため、耕作放棄地の増加を防ぐ施策として機能しています。
また、国は農地の集約化や担い手確保を推進しており、本制度もその柱の一つです。
実際に、制度は1973年の租税特別措置法改正を契機に拡充され、現在は担い手不足対策の中核となっています。
農地の集約と世代交代を促す点で、政策的意義は大きいです。
また、相続税の一括納付による農地売却を防ぎ、地域の景観や生産基盤の保全にも寄与しています。
農家が自立的に経営を継続できるよう金融機関の融資審査でプラス評価される場合もあります。
納税猶予制度は毎年の税制改正で内容が見直される可能性もあるため、最新情報を定期的に確認する姿勢が欠かせません。
とくに、近年は相続開始前3年間の農業従事状況が厳格に問われる傾向が強まっており、形式的な就農では要件を満たせないケースが増えています。
農地の相続時に相続税の納税が猶予される仕組み
相続人が特定農業相続人として認定され、農地での営農を続ければ相続税の納付は猶予されます。
さらに、猶予税額は一定期間後に条件を満たせば免除される場合もあります。
また、手続きとしては申告期限内に継続届出書を提出することが不可欠です。
猶予期間中も農地を保持し、継続届出書の提出は原則として3年ごとに提出する必要があります。
要件を外れると猶予税額と利子税を合わせて納付しなければならないため、継続管理が欠かせません。
具体的な条件には農地の所在地や面積、相続人の年齢・就農状況なども考慮されます。
さらに、猶予の対象税額は農業投資価格と時価との差額に相当する部分とされ、評価方法も定められています。
農家にとっては納税資金を設備投資や販路開拓に振り向けられる点が大きな利点です。
贈与によって取得した場合も一定条件で適用される
農地を生前贈与で引き継ぐ場合でも、受贈者が18歳以上かつ3年以上の営農実績を持ち、農業委員会の証明を受ければ贈与税の納付が猶予されます。
適用を受ける際は、贈与契約書や農地法に基づく許可書など関係書類の保存が求められます。
贈与後も継続して営農しなければ打ち切りとなるため、相続と同様に計画的な管理が必要です。
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相続税の納税猶予の要件
納税猶予を受けるには複数の厳格な要件を満たす必要があります。
以下では、3つの主要要件を確認していきましょう。
専門家への相談時には、相続開始予定時期や農地の評価額見込みを提示すると、より具体的なシミュレーションを受けられます。
被相続人が生前に農業を営んでいたことが条件
被相続人は生前に稲作や野菜、果樹など実際の耕作をおこなっていた事実が必要です。
また、証拠として確定申告書の農業所得欄や農業者登録、農地利用状況報告書などが求められます。
たとえば、経営所得安定対策の交付実績やJAの出荷証明も補完資料となります。
要件を満たさない場合は、制度の適用を受けられません。
近隣農家と共同利用していた場合でも、被相続人の耕作責任が明確でなければ証明が難しいため、日頃から契約や作業記録を残しておくことが望ましいです。
農業相続人が農業を継続する意思と能力を有していること
相続人は農業を主たる生業として続ける計画を示し、市町村の認定新規就農者や既存の農業収入などで能力を証明します。
農業者年金への加入、農機の取得計画、販路の確保など具体的なアクションが想定されています。
さらに、所得の過半を農業で得る見通しや、5年以上の経営計画書を準備していると審査がスムーズです。
認定新規就農者の申請に当たっては、年間作付計画や販売先の確保状況など具体的な数字を示すと評価が高まります。
金融機関からの融資や補助事業の採択時にも、納税猶予制度の利用実績が将来の収支計画の裏付けとして重視される傾向があります。
農地の適切な管理と届け出の手続きをおこなう必要がある
農地の利用状況を記載した届出書を期限内に提出しないと、猶予取り消しと利子税込みの一括納付を求められるおそれがあります。
継続報告は原則3年ごとで、届け出様式は国税庁サイトで公開され、オンライン提出にも対応しています。
また、オンライン提出後も送信控えと受信通知を保存し、ファイル名に日付と書類名を付けると後から確認しやすいです。
クラウドサービスを導入する際には、データのバックアップ先やアクセス権限の設定も合わせて見直してください。
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納税猶予が打ち切りになる条件
猶予を維持するには要件の継続充足が不可欠であり、違反があれば直ちに相続税の全額納付が求められます。
ここでは、代表的な3つの打ち切り事由を整理します。
農地の譲渡や転用をおこなった場合は猶予が打ち切りになる
農地を売却したり宅地や駐車場に転用すると猶予は終了します。
一部の農地でも転用部分に相当する税額が取り消されるため、部分転用にも注意が必要です。
ただし、農地中間管理事業など特定貸付けに該当する場合に限り、例外的に納税猶予は継続されます。
猶予が打ち切られた場合は、猶予期間中に発生した利子税も合わせて納付する必要があり、負担は相続時より大きくなるケースが多いです。
農業経営を廃止したと認められると制度は適用外に
営農を停止したと認定されると、猶予は打ち切られます。
家族任せで実態のない耕作は認められないため、農業日誌や委託契約で実績を示すことが大切です。
また、作付面積の大幅な減少や長期休耕が続くと廃止と判断される恐れがあります。
制度を維持するためには、日頃から経営記録を整理し、税務署や農業委員会からの調査に備えておくことが重要です。
継続届出書の提出を怠ると打ち切り対象となる
継続届出書を期限内に提出し、内容の正確性を保たなければ猶予は失効します。
期限は相続税申告期限から3年ごとの応答日であるため、カレンダー通知で管理すると安心です。
万が一、要件を満たせなくなった場合でも、早期に対策を講じることで負担を抑えられる余地が残ることがあります。
たとえば、農地を農地中間管理機構へ貸し付けるなど、一定の救済措置が設けられているため、諦めずに検討しましょう。
最終的には税務署の判断となるものの、証拠書類を揃えて期限内に相談することが円滑な解決への近道です。
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まとめ
農地の納税猶予制度は、相続税や贈与税の負担を軽減し、農業の継続を支援する目的で設けられた制度です。
適用には被相続人や相続人の農業従事状況、管理体制の整備など厳格な条件を満たす必要があります。
譲渡や農業廃止、届出の不備があると猶予が打ち切られるため、制度を正しく理解し対応しましょう。
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輝広
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