不動産売却では、「契約不適合責任」に注意しなければなりません。
しかし、土地や建物の売買は、専門家でない限り日常的におこなうものではないので、「いまいちよくわからない」と疑問に思う方もいらっしゃるかと思います。
今回は不動産売却を検討中の方に向け、契約不適合責任の概要と瑕疵担保責任との違い、注意点についてお伝えします。
売却前に知っておきたいポイントをまとめましたので、ぜひ参考になさってください。
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まずは、不動産売却における契約不適合責任とはどのようなものなのかを見ていきましょう。
契約不適合責任の定義とは?
わかりやすくご説明すると、契約不適合責任とは売った商品に不備や不足があったとき、売主側で責任を負うというものです。
請負契約の場合も同じように、請け負った仕事が当初の契約内容と適合しない場合は、発注者に対して責任を負わなくてはなりません。
目的物が契約上と異なる(不適合)場合、契約不適合責任に該当します。
つまり、契約不履行により生じる責任ということです。
以前は瑕疵担保責任と呼ばれていましたが、令和2年の民法改正にともない、これまでの概念が廃止され契約不適合責任という名称になりました。
のちほど詳しくご紹介しますが、瑕疵担保責任と一部異なる点があるので注意が必要です。
該当するのはどのようなとき?
一般的に下記のようなトラブルが起きたとき、売主が責任を負うことになります。
●納品したシステム(ホームページなど)に不備があったとき
●契約上の数量より少なかった場合
●引き渡した商品が契約上の品質と異なる場合
不動産売却では、「引き渡した商品が契約上の品質と異なる場合」という内容が該当することになります。
ここでいう商品とは、「土地」や「建物」を指すため、引き渡した不動産に不備があった場合は、売主がその責任を負わなければなりません。
請求の内容は?
引き渡した不動産に不備があった場合、買主からは下記の5つの内容が請求されます。
●追完請求:補修請求や代替品の請求
●損害賠償請求:損害が発生した場合
●代金減額請求:物件代金などの減額を請求
●契約解除:契約を白紙にし、土地や建物を返還したうえで返金を請求
●催告解除:期限を決めて債務履行の催告ができ、期限内に履行されない場合は解除できる
代金減額請求と契約解除については、追完請求を求めたが売主が対応しなかった場合に請求される内容です。
また、契約解除にともなう代金の返金を請求するためには、土地や建物は売主に返さなくてはなりません。
ちなみに上記の内容は、民法改正後の条文、民法第562条で定められています。
第563条には代金減額請求について、第574条には損害賠償請求と契約解除についての条文が設けられています。
不動産売却における契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いとは?
続いて、不動産売却における契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いについて見ていきましょう。
先述でもご紹介したとおり、令和2年の民法改正にともない名称が変更されました。
瑕疵とは引き渡しのときにはわからなかった、傷や不具合のことを指しますが、改正後は「瑕疵」という言葉は使われなくなります。
また、契約不適合責任に変わったことで売主が負う責任は重くなり、買主は中古住宅の購入のハードルが低くなり、より買いやすくなりました。
両者を比較するとどのような違いがある?
不動産売却における両者の大きな違いは、買主が請求できる範囲です。
先述でもご紹介したとおり、万が一引き渡した土地や建物に不備があった場合、契約不適合責任では5つの責任を負わなくてはなりません。
しかし、瑕疵担保責任の場合は損害賠償請求と契約解除のみとなります。
隠れた瑕疵、つまり細心の注意を払っても見つけられなかった傷や不具合が対象です。
瑕疵担保責任では瑕疵が見つかってから1年以内は損害賠償請求を、契約上どおりに目的が達成できない(住むことができない)場合は、契約解除ができると定められています。
不動産売却における契約不適合責任の場合、隠れていたかどうかは問われず、契約書に書かれていたかが重要なポイントです。
たとえば契約書に「この家は雨漏りします」と書かれ、買主が納得したうえで購入すれば、雨漏りがして住めなくなっても責任を負う必要はありません。
買主が雨漏りの事実を知っていても、契約書に雨漏りすることが書かれていなければ、契約上の品質と異なるため責任を負うことになります。
つまり、単純に契約の内容と異なる土地や建物を売却したときは、債務不履行に該当するということです。
また、期間制限にも違いがあります。
これまでは、瑕疵を理由に損害賠償請求となった場合、不具合などを買主が見つけてから1年以内に「権利を行使する」必要がありました。
しかし、民法改正後は1年以内に「通知」すればOKとなっています。
売主が悪意を持っていたり重大な過失があったりしたときは、期間の制限はありません。
なぜ民法改正に至ったの?
瑕疵担保責任について裁判になった場合、隠れていたか否かを証明するのは難しく、問題視されていました。
瑕疵という言葉も日常的に使うものではなく、民法では難しい用語が多用されていますよね。
「わかりやすい法律に変える」ということも、民法が改正された理由のひとつです。
不動産売却における契約不適合責任の注意点とは?
最後に、不動産売却における契約不適合責任の注意点を見ていきましょう。
売主側で注意点を把握しておくことで、引き渡し後のトラブルを回避できます。
注意点1:対象外の範囲を契約書に記載する
注意点としてまず挙げられるのが、契約書に責任の対象外の範囲を盛り込んでおくことです。
不具合などが懸念される不動産売却とは、一般的に中古物件の売却になるかと思います。
新築とは違い、設備が故障したり不具合が出たりすることが多いため、すべての不具合に対して責任を負うのは大変ですよね。
細かいところまで適用にしてしまうと、契約自体がスムーズにいかなくなる恐れもあります。
そのため免責の範囲を取り決め、契約書に記載しておくのがおすすめです。
水道設備や電気配線、断熱材などは築年数の経過によって劣化していることが多いといえます。
また、瑕疵担保責任では、築年数が経過した古い中古物件を売却するとき、売主の責任をすべて免責する契約も多くありました。
どちらも任意規定のため、売主と買主が納得すれば免責することが可能です。
ただし、先述でご紹介した5つの責任についてそれぞれ買主と話し合い、お互い納得したうえで決定するのが望ましいでしょう。
これまでは「すべて免責」という風に一言で済ませられたことも、現在はそれぞれの請求権に対して免責する必要があります。
注意点2:通知期間を設定する
通知期間を設定することも、注意点のひとつです。
先述でもご紹介したとおり、買主が不具合などを見つけた場合、1年以内に通知することで責任の履行を求められるようになりました。
しかし通知期間は買主が了承してくれれば、自由に設定することが可能です。
実際の取引においては、民法改正前と同様、3か月が現実的な期間といえます。
まとめ
契約不適合責任の発生する不動産売却では、瑕疵担保責任との違いや注意点など、知っておくべきポイントがたくさんあります。
トラブルを回避するためには、責任を負う範囲や期間を明確にし、契約書に記載しておくことが大切です。
今回ご紹介した内容をぜひ参考にしていただき、お互いに信頼できる取引をおこなってください。
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